どうも!アブーです。
今回はCRAのお仕事に欠かせない書類、治験実施計画書について書きます。
「治験実施計画書 とは」とググってみても難しい言葉でしか解説されていないので、この記事では普段の会話で使う言葉で解説していきますね。
この記事を読んでCRAの業務内容をより明確にしてもらえると嬉しいです。
目次
治験実施計画書とは?:その治験の全容が記載されている資料
平たく言ってしまうとこの章のタイトルのようになります。
その治験の、
- 治験課題名
- 目的
- 治験デザイン
- スケジュール
- 選択・除外基準
- 併用禁止薬
- 有害事象
研究で実験をする時、手順を書いたノートや紙のことをプロトコルって言いますよね?
要はあれの治験バージョンと言うことです。
実際、CRAの僕らは治験実施計画書のことをプロトコルと略して呼んでいます。
(この記事でもプロトコルと呼ぶことにします!)
治験課題名
治験課題名とは治験の目的を一言で端的に表したものです。
治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)の方など、社外の人に説明する際に開始時に初めに読み上げたりします。
(本治験の課題名は「○○患者を対象とした△△の××試験」でございます。みたいな感じです)
プロトコルに記載されている内容はたくさんありますが、すべてこの課題をクリアするためのものです。
例としてネットで拾ってきたものを挙げると、
「慢性心不全患者を対象としたCtdos-123製剤の用量設定試験」という試験があったようです。
このように、何の疾患の患者さんが対象で、何ていう開発コードの候補品か、そして何を目的とした試験なのか。
先程の例の〇△×の3つの情報がまず入ってきます。
例に挙げたものは3つとも短い言葉で表せるものでしたが、中にはすごく長くなる場合もあります(笑)
目的
こちらは治験課題名より、少し詳しく目的について文章にしたものです。
正直言ってしまうと治験課題名とあまり変わりません(笑)
こちらも説明の時にまずは読み上げることになります。
治験デザイン
一口に「治験」と言っても、プラセボ(有効成分が含まれていない偽薬)と治験薬を比較するプラセボ対照や、
プラセボ対照ならどの被験者がプラセボで誰が治験薬かを施設スタッフと被験者の両方がわからないようにする二重盲検かどうか、
また、プラセボではなく、既存の治療薬(既承認薬)と治験薬を比較する実薬対照など、色々と方法が異なってきます。
更に、国内だけのローカル試験か、海外でも申請を行うグローバル試験か、目標症例数は何例か、投与群はいくつあるか、
などなど、これらの情報をひっくるめて「治験デザイン」といいます。
疾患や治験目的によって適切な方法は異なりますので、プロトコルを渡されたら要チェックですね。
スケジュール
スケジュールのページには主に来院間隔や投与間隔、検査や有効性評価を行う来院はいつか、などの情報が書かれています。
被験者の対応は主に治験担当医師やCRCにしてもらうことになります。
被験者が来院している時にわからないことがあるとCRAに電話で問い合わせをされることになりますので、
どの来院でどんなことをするか、施設スタッフがすべき対応をしっかりイメージするためにスケジュールはしっかり把握しておくべきです。
選択・除外基準
先に言っておきますが、選択除外基準はトップクラスに大事な情報になります。
これは一言で言うと「どんな患者さんがこの治験に適切か?」の条件を列挙したものです。
治験には選択基準を満たし、除外基準に当てはまらない患者さんだけが参加してもらえます。
例を挙げると、選択基準では、何歳以上の患者さんで、症状の重症度はこれくらいなど、クリアされていないといけない条件について定義されていて、
除外基準では、○○を合併している患者さんは参加不可、過去5年以内に悪性腫瘍の既往歴がある人は参加不可、など参加できない条件について記載しています。
この説明だけだと選択・除外基準の重要さがあまり伝わらないかと思いますので、もう少し詳しく説明しますね。
極端な話、治験の後半で選択・除外基準を満たしていないことが発覚すると、その被験者さんから得られたデータが意味を成さなくなってしまいます。
選択・除外基準は被験者さんの安全と治験薬の有効性評価のために設定されています。
ですので、選択・除外基準が満たされていないと被験者さんを危険にさらし、加えて正確な治験データを得られなくなるという最悪な結果に繋がってしまいます。
それに選択・除外基準に関する質問は被験者さんが来院されてるときに電話できたりします。
「○○を合併している患者さんなんですけど組み入れできますか?今来院されているところなんですぐに教えて欲しいのですが…」
という感じで、情報の正確さだけでなく緊急性も求められます。
すぐに答えられるように、プロトコルを渡されたらすぐに覚えるべき箇所ですね。
また、ただ覚えるだけでなく、「なぜこの選択基準、除外基準が設定されているのか?」という視点を持って読むべきでもあります。
中には「この基準は難しいよ~!」と医師に言われることがあったり、「なんでこんな基準が設定されてるの?」と質問されることもあります。
どんな基準も、究極的には安全or有効性評価のためという理由にたどり着きますが、CRAとしてはなぜ安全or評価に繋がるかを覚えておくべきだと言えます。
併用禁止薬
これも選択・除外基準と同じくらい重要です。
こちらでは治験中に使用してはいけない薬剤を列挙しています。
つまり、治験中に併用禁止薬とされている薬剤を使う必要がある患者さんは必然的に参加できない、という意味です。
仮に選択・除外基準をクリアしていても、併用禁止薬を使用しなければいけないなら、患者さんの安全が保証できないので参加できません。
もう一つの選択・除外基準と言ってもいいかもしれません。
こちらも「なぜこれが併用禁止なんだ?」という視点を忘れずに確認しておきましょう。
有害事象(Adverse Event:AE)
プロトコルには、その治験薬を使用して被験者から報告された有害事象が記載されています。
まぁその前に有害事象って何?って感じかと思いますので定義を引用しておきます。
治験薬又は製造販売後臨床試験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくない又は意図しない疾病又はその徴候をいう。
当該治験薬又は当該製造販売後臨床試験薬との因果関係の有無は問わない。
日本製薬工業協会
ざっくり要約してしまうと、治験薬を投与された被験者さんに起こった不都合な出来事です。
有害事象は治験薬との因果関係がないものも含まれますので、極端な話「被験者さんが交通事故で骨折した」とかも有害事象になります。
そして、有害事象には副作用も含まれています。
治験には段階があるのですが、第Ⅲ相試験の場合だとⅠ相試験・Ⅱ相試験で報告された情報がけっこうあるはずなので、
治験担当医師やCRCに伝えるため、有害事象・副作用情報もCRAとしてしっかり把握しておくべき項目ですね。
まとめ:把握すべきは上記+更に2点
治験実施計画書は試験によっては200ページ近くなる非常に情報量の多い資料となります。
上記のものはCRAとして把握していて当然な項目です。
特に選択除外基準、併用禁止薬は重要度が高いのでしっかり見ておくことをオススメします。
とは言っても正直、全て一言一句を覚えるのはとてもじゃないけど無理です。。。
なので、CRAとしては上記に加えて以下2点だけは押さえておいてください。
その治験特有の事項
その治験特有のことは配属されてからじゃないと分からないですが(笑)
ただ、施設の人達はこちらがお願いする試験以外に複数の治験を掛け持ちしていることが多いです。
それらの中で特徴を掴んでもらったり、注意して欲しいことを伝える必要がありますので、特有のことは知っておきましょう。
強いて例を挙げるなら、選択基準の何番目がすごく難しいとか、検査機器の使用方法が複雑とかですかね…。
何ページ目に何がかかれているか把握する
例えば選択基準はプロトコルの何ページ、スケジュールは何ページ、有害事象は何ページといった具合で覚えておきましょう。
施設から問い合わせがあった際にすぐに正確に答えられるようにしておくためにオススメします。
人間の記憶はあいまいですので、覚えたつもりでも間違っていたりします。
少しでもあやふやなら「その質問に関してはプロトコルの何ページ目に記載がありまして…」と書類ベースで答えられると
余計な混乱もなく穏便に対応できるようになります。
僕の場合は▼こういうタックインデックス(紙ラベル)を使って一瞬で目的のページを開けるようにしています。

本当のまとめ(笑)
少し専門用語が出てきつつの説明ですみませんでした。。。
9つ読むポイントを紹介しましたが、これらの中でも優先順位を付けるとしたら、やはり選択除外基準・併用禁止薬ですかね。
他もCRAとしては知ってて当然なのですが、情報量は少ないのですぐ覚えられると思います。
なので、より時間を割くべきは選択除外、併用禁止かなと思います。
また、実はプロトコル後半部分に関しては紹介していない部分がありますので、実際に渡されたときに確認してみてください(笑)
(重要度としてはこの記事で紹介したもののほうが高いので、そこは安心してください)
治験実施計画書(プロトコル)の説明を通してCRAの仕事がどんなものか、よりイメージが明確になれば幸いです。
以上、読んでくださってありがとうございました~^^
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